Atmoph Windowをきっかけに、ブラジルに足を運んでくれれば本望

※このインタビューにはブラジル音楽のボサノバ、ブラジル建築など、ブラジル文化の話が多く含まれます。ぜひボサノバを流して、ブラジルを感じながら読んでくださいませ。

アトモフ創業から10年、これまで何度も撮影に挑戦しようとしたものの、現地の環境や、カメラマンの確保、移動の難しさなど様々なハードルのためになかなか実現できずにいた南米ブラジル。2024年7月、そんなアトモフにとって待望のブラジル風景を、リリースしました。

ボサノバをきっかけに、ブラジルには人一倍強い思いがあるという代表の姜(かん)に、ブラジル風景リリースを機にブラジルへの想いを聞いてみました。

姜 京日(かん きょうひ)Co-Founder / 代表取締役
ロボット工学を専門に、青山学院大学にて機械工学の学士と南カリフォルニア大学 (USC) でコンピュータサイエンスの修士を取得。その後NHN JapanでUser Interface Technology室を率い、任天堂にてゲーム機器のオンライン関連UIの開発を行いました。東京生まれ、ブラジル音楽が大好き。

ブラジル音楽に出会わなければアトモフはない

朝のイグアスの滝

ーー ブラジルの風景を撮影したミカエルさんのインタビューもすごく面白かったです。やっぱり、その場で撮影した人にしか感じられないことってあるなと、改めて感じました。ミカエルさんはイグアスの滝に感動しすぎて、「正直、動画ではイグアスの滝の壮大さの10%も伝えられてない。Atmoph Windowで見た上で、やっぱり現地に行って欲しい」と。

姜:そう。アトモフのカメラマンはみんなそう言うんですよね。伝えたいこと、感じてもらいたいこと、たくさんあるけど、動画で全ては伝えられないんです。これは実際に撮影した人じゃないとわからないと思います。

だからこそアトモフは「日々を、冒険にする。」という理念を掲げていて、これにはAtmoph Windowをきっかけに、現地に足を運んで欲しいという想いも含まれています。

ーー そうだったんですね。ウェブサイトのプロフィールにも「ブラジル音楽が好き」と書いているくらい、姜さんのブラジル愛は人一倍強いと聞きました。ブラジルとはあまり接点がなさそうに思ったのですが、どんなきっかけですか?

姜:そうですよね。2004年から2年半ほど、ロボットの研究者になりたくてロサンゼルス大学院に留学してたんです。勉強とか研究とか英語とか、この時が人生で一番辛くて、そのストレスを癒してくれたことの1つがブラジル音楽のサンバやボッサでした。

留学後期、博士になる夢が敗れたときはロサンゼルスからラスベガスまで一人で車を飛ばして、道中はずっとカルトーラの”Pranto de Poeta” 1曲だけを聴いていたんです。勇気をもらって起業しようと誓ったのはこの車中でした。

ブラジル音楽がなければ今のぼくやアトモフはないと言っても過言ではないですね。

よくよく思い出すと、母もボサノバが好きで家で流れていたこともあったんです。なので独特のリズムや曲調に慣れ親しんでいて、心地よかったのかもしれません。今でも毎日聴いてます。

ーー 恥ずかしながら、サンバやボサノバがブラジルの音楽というのも知りませんでした。

姜:たしか、 ボッサが「傾向」とか「流れ」で、ノバが「新しい」みたいな意味があるんです。ブラジルのサンバとジャズ が融合したようなリオデジャネイロで生まれた音楽なんですよね。ブラジルって陽気なイメージがありますけど、ボサノバは哀愁、愛、寂しさ、孤独とかいろんなテーマがあって、それぞれの個性がとてもいいんですよ。アトモフのコンセプトにも通じるところがあるので、大好きです。

ボッサはアントニオ・カルロス・ジョビンとジョアン・ジルベルトが作ったジャンルなんです。もう亡くなっていますが、ジルベルトがご存命で来日した時にライブにもいきました。

有楽町の1000人くらい入る会場だったんですが、めちゃくちゃ遅れて来たんですよね。しかも、暑い時期だったと思うんですが、本人の希望で空調も止めてくれって(笑)驚きましたが、音にこだわるあたりさすがだなと思いました。

あと、 ヴィニシウス・ヂ・モライスという作詞家もいて……、あ、どこまでボサノバの話します?

ーー これくらいにしておきますか(笑)

姜:とにかくボサノバをきっかけにブラジル、特にリオデジャネイロへの想いは人一倍強いです。

ブラジルは建築も魅力的なんですよ。Atmoph Windowは窓なので建築とも関わりが強い。なのでよく建築の写真集や、特に安藤忠雄、コルビュジエの本なども読んでいました。ブラジル建築だとオスカー・ニーマイヤーが有名で、今後のAtmophのブラジル風景に出てくるかもしれません。

明日の博物館

10年間実現しなかったブラジルでの撮影

ーー 今回はアトモフメンバーでブラジル出身のミカエルさんが、一時帰国したタイミングで撮影をすることができました。これまでの10年間撮影しようとしたことはありますか?

姜:いろんなアプローチをしてきたんですが、なかなか実現しませんでした。

一見シンプルにカメラをポンと置いて、定点で撮影しているだけに見えるかもしれませんが、アトモフの風景撮影ってすごく難しいんです。窓からの風景に見える構図とか、水平線や視野角、撮影場所の環境や、撮影していると観光客の人が話しかけてくるとか。あとは基本的に単独での撮影で、高額の撮影機材を扱うこともあり、地域によっては盗難や身の危険を伴うリスクもあります。

国内外含め7名のビデオグラファーに協力いただいていますが、彼らが行きづらい場所となると新たにパートナーを見つけるか、自社のメンバーが足を運ぶ必要があります。新たにパートナーを見つけるというのも簡単ではなくて、アトモフの基準を理解いただいたうえで実践でき、先述のようなリスクや大変さがあることも理解していただかなくてはいけない

しかもプロのカメラマンでも15分以上の映像を定点で撮影するというのは、誰もやったことがないんですよね。そんな風景映像が世界に存在しないからこそ、Atmophが始めました。だから自分なりのこだわりがあればあるほど、アトモフのコンセプトを理解していただくことも難かったりするんですよね。

結果、10年経ってようやくブラジルでの撮影が実現できました。

ミカエルさんはブラジル出身で土地勘もあり、CGの風景を作成しているからこそ構図の理解もちゃんとあるので、もしかしたら撮影お願いできるかもしれない、そうしてテスト撮影を経た結果、適任でした。

ーー ミカエルさんも撮影は簡単ではなかったと言っていましたね。ブラジルの風景は今後増やしていけそうですか?

姜:どうでしょう。今回はたまたまミカエルさんが帰国する機会がありましたが、基本は日本に住んでいるので、簡単ではないと思っています。でもまだまだ魅力のある場所は数えきれないほどあるので、増やしていきたいですね

ーー 今回ブラジルは3連続、シングルとパノラマを合わせると18の風景をリリースしました。特に姜さんがおすすめする風景はどれでしょう?

姜:リオデジャネイロの街並み」ですね。ブラジルの景色が見たいと思ってきた中でも特に、やはりボッサ誕生のリオデジャネイロに特に思い入れがあります。よくボッサやサンバのアルバムジャケットにもなっている、この海に浮かぶ特徴的な山々とリオの街並み。こういうビーチでジョビンもジルベルトも歌ってたのかなと思うと、時空を超えて心が一歩近づく気がします。留学時代のときに救ってくれてありがとうと。

リオデジャネイロの街並み

実はこんなに好きと言っておきながら、まだブラジルには行ったことがないんです。少しビビリな自分がいて。でもいま色々とブラジルのことを話してみて、まだまだ浅いなって感じました。それはやっぱり実際に足を運んでないからだと思います。Atmoph Windowから窓を開けてそこに行けたらいいんですけどね(笑)

まだそれはできないから、少しでも近いものを感じてもらいたい。ブラジルの風景とかを見て、「え、こんなに素晴らしい建築があるんだ」とか「なんか聞こえてくる音楽がいいな」とかを感じて欲しいんです。それで、いつか行きたいと思って、実際にブラジルに足を運んでくれれば、ぼくらは本望です。